近年プライバシー保護の問題と合わせて耳にするようになったサードパーティクッキー(3rd Party Cookie)ですが、“名称のポップさ”以外の基本的な概要や今後の影響値についてあまり理解されていない方が多いのではないでしょうか。
本記事ではサードパーティクッキーについての概要や、個人や市場に及ぼす影響値。規制・廃止等の詳細について詳しく解説していきます。
Cookie(クッキー)とは
まず初めに、サードパーティクッキーを理解するため「Cookie(クッキー)」について理解する必要があります。
Cookieとは、訪問したWebサイトから送られ、Webブラウザに一時的に保存されるユーザー情報(IDや閲覧情報など)のことです。具体的には以下のように活用されています。
[box06 title=”Cookieが使用されている例”]
- ECサイトカートに過去に入れた商品が記録されている
- 再訪問したページのログインIDとパスワードが保存されている
- サイトを訪問した人に適したリマーケティング
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上記の場面でCookie(クッキー)に助けられた経験がある方は多いのではないでしょうか。
改めてCookie(クッキー)とは、ユーザーの行動や・ID・パスワード・メールアドレスなどユーザー情報が集約されたデータのことです。
サイトに訪れた際のユーザーの情報データであるクッキーを、ユーザーが使用しているブラウザと訪れたウェブサイトの間でやり取りすることで、ブラウザを識別し、ユーザーとサイト運営者の双方が必要な情報を記録してくれる機能になります。
Cookie情報の構成
Cookieに記録されている具体的な情報は以下になります。なんとなく把握しておけば最高です。
[table id=10 /]
ファーストパーティクッキーとサードパーティクッキー
サードパーティークッキー(3rd Party Cookie)と混同しやすい物としてファーストパーティークッキー(1rd Party Cookie)なるものも存在します。
上記2つは、私たちがウェブサイトを快適に閲覧するサポートをしてくれています。2つの違いとしては、訪れたウェブサイトが発行したクッキーを「ファーストパーティクッキー」。訪れたウェブサイト内でそのウェブサイト以外の場所から発行されるクッキーを「サードパーティクッキー」と呼びます。
[table id=11 /]
また1st party cookieはドメインごとにしかCookie付与ができないため、サイト横断ができず、3rd party cookieは横断対応が可能ではありますが、クッキーの持つセキュリティやプライバシーのデメリットを懸念して3rd party cookieをブロックするブラウザが増えているため、広告活用や効果測定の面で精度が低くなってしまうという問題があります。
訪れたサイトである一人称視点から発行されるクッキーがファースト、そうではない第三者から発行されるクッキーがサードと覚えておきましょう。
サードパーティクッキーの活用方法
具体的にサードパーティクッキーの活用事例について、4つの事例を紹介します。
広告の効果測定
配信している広告がCV(購入や資料請求などの成果)にどれほどつながったか測定するために、サードパーティクッキーが利用されることがあります。CVに至ったブラウザが広告から発行されたクッキーを所持しているか否かで、広告経由のCVであるかどうかを判断できます。
リターゲティング広告
リターゲティングとは、Webサイトを訪問したユーザーに対して表示させる広告のことで、一度自社サイトに訪問した興味・関心のあるユーザーにターゲットできるため、コンバージョンにつながりやすく、費用対効果の高い特徴があります。Webサイト内に計測タグを設置し、そのページに訪問したユーザーのブラウザにCookieを付与し、ターゲティングします。
例えば、ユーザーがリターゲティングのタグが設置されているウェブサイトAに訪れたとします。この時に発行されるリターゲティングタグは、サードパーティクッキーです。
そしてこのリターゲティングタグの情報をもとに、別サイトを閲覧しているユーザーに対して自社の商品やサービスの広告を表示させるというのがリターゲティング広告の仕組みです。
アフィリエイト
アフィリエイト内のリンクをクリックするとLP(広告などを経由してページを遷移したときに最初に表示されるページ)へ遷移しますが、リンクからLPへ遷移する前に裏側ではサーバーを経由しています。
経由したサーバーがクッキーを発行することで、リンクの遷移先である広告主のウェブサイトは、流入してきたユーザーがアフィリエイトリンク経由で流入してきたことが識別できるようになります。
アトリビューション分析
アトリビューション分析とは、CVに対する広告貢献度の分析手法のことです。Webマーケティングにおけるアトリビューション分析は、計測ツールを導入しておこなうケースが多く、そのツールがサードパーティクッキーをもとに計測している場合があります。
CVに至った場合、ユーザーは直前に接触した広告Aだけでなく、その数日前に何度も広告Bに接触したことによって購入意欲が高まっていた可能性があります。つまり、広告Bは興味関心を植え付け、広告Aがダメ押しをしたということになります。
その場合、広告BからCVにつながった数は少ないかもしれませんが、非常に重要な役割を果たしている広告になります。こうしたアトリビューションの計測も、各広告がサードパーティクッキーを発行する仕組みの上に成り立っています。
Cookie規制に関するトレンド
これほど便利なクッキーが、Googleによって規制されるというニュースを見た方も多いのではないでしょうか。以下では、サードパーティクッキーがなぜ・どのように規制されるのか解説します。
法律による規制
個人情報保護に関する話題は、情報化社会が進めば進むほど取り沙汰されています。これにともない、世界各国で個人情報保護に関しての対策が進められています。
その中で注目されたものとして、EU圏におけるデータ保護規制の「GDPR(General Data Protection Regulation)」とカリフォルニア州消費者プライバシー法の「CCPA(California Consumer Privacy Act)」という2つの規則です。
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日本でも改正個人情報保護法が公布され、2022年4月1日から施行されます。
もちろん各規制により差異はありますが、クッキーに関して共通していることは「クッキーを利用する場合、必ずユーザーに許可を取らなければならない」ということです。
今後Cookie利用については各国法律によって制限が厳しくなると考えられます。
ベンダーによる規制
法律はクッキーを禁止や廃止にするのではなく、制限をかけているだけの存在である一方、クッキーを禁止や廃止にしているのはベンダーになります。法的な規制が強まる流れと同時に、クッキーが個人情報として見られるようになり始め、プライバシー保護の観点からクッキー利用に批判的なユーザーも増えてきました。そういったユーザーの反応も含めて、ベンダーはクッキー利用に制限をかけるようなアクションを取っていることが考えられます。
以下では、ITベンダーの中でも代表的であるAppleとGoogleの、それぞれのクッキー対応について解説します。
Apple
Appleは同社のブラウザである「Safari」において、2017年から導入した「ITP(Intelligent Tracking Prevention)」を少しずつ強化してきました。
ITPとは、トラッキングを防止する機能のことで、最新バージョンであるITP2.3ではサードパーティクッキーの利用が完全にできなくなっています。またITP2.3ではサードパーティクッキーだけでなく、ファーストパーティクッキーにも制限をかけていて、Appleは非常にプライバシー保護に強気な姿勢であることがうかがえます。
Googleは同社ブラウザである「Google Chrome」において、サードパーティクッキーを2023年中に廃止することを発表しています(2021年6月24日時点)。当初は2022年1月までにサードパーティクッキーを廃止するという発表をしていたため、約1年半~2年弱の延期となりました。
サードパーティクッキーを廃止するにあたって、段階的にサードパーティクッキーを規制していく予定のようです。
今後Googleがどのようにサードパーティクッキーを制限していくのかについては、常に最新情報を追う必要があります。
まとめ
上記のようにCookieの規制の動きは年々高まっているのです。Web広告のターゲティング等において重要な変化となるため、Webマーケティングの担当者は最新の動向をチェックし、対策を取ることが求められます。